焼きたての香ばしいパンの香りは、私の思い出につながっています。
パン屋さんに出向くと「買おうかな?」と悩むのはフランスパン。
一人では食べ切れないので、友達とホームパーティーをするときなどしか買わないけれど、今日は特別なんだ!という日には、フランスパンを買います。
エキストラバージンのオリーブオイルにバルサミコ酢で食べるのも好きだし
フランス産のエシレバターと組み合わせるのも好き。
トマトとバジルとニンニクがあれば、ブルスケッタにしてもいい。
ガーリックバターを染み込ませて、カリッと焼き上げれば、ガーリックトーストに。
ちょっと食欲がないときは、コンソメでオニオングラタンスープなどにしてもいいですね。
高度成長期に、ニッポンの頑張るサラリーマンだった父は、ほとんど休みなく働き続けていました。
兄は父の顔を見ると、知らないおじさんかと思い泣いて騒いだそうです(笑)
子どもに顔を忘れられてしまう…!!
そんな恐怖心からか、私が生まれてからは家族サービスにも気配りするようになったようですが、それでも休みは月に一度あるかないかでした。
そんな父が、風邪で会社を休んだ日。
小学校から戻った私を呼びつけ、必ず買いに行かせたのがフランスパンでした。
焼き上がりの時間にパン屋さんに向かい、子どもが持つには少々長すぎるパンを、えっちらおっちら運びました。
私を待つ間、父は牛乳を小鍋に入れて温めています。
パリっとした香ばしい皮と、ふわっふわの中身のフランスパン。
父はミルクにお砂糖をたっぷり入れずずずーっとすすります。
私もとなりでずずーっとすすります。
フランスパンは父が風邪で会社を休んだ日の思い出。
ある意味、忙しい父を独り占めできた日。
美味しいフランスパンが食べたくなってきました。
(水浅葱)